高木新平コラム|BtoBでもBtoCでもない。「 BtoBC企業 」という選択肢
トレンド
2026.02.12
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BtoB企業が、いま直面している共通の壁
地元である富山県の仕事をするようになって痛感すること。それは世の中BtoB企業だらけという事実。日本企業の約70%程度がBtoB領域のビジネスをしていると言われている。 特に地方に行くと、何かの部品を作っていたり、最終製品を持たずに産業を支えている会社が数多く存在する。(富山最大の企業はYKK!)
だから地方で経営者向けにビジョニングの講演をすると同じような相談を受ける。「うちはBtoBなんだけど、どうすればブランド認知や付加価値を高められるか」「どうしたら会社として魅力的な物語を発信できるか」「顧客や求職者から選ばれる会社になるにはどうしたらいいか」。
背景にある課題は共通している。地方×製造業×BtoBは、若年層採用が特に難しい業種セグメントだと言われる。新卒や第二新卒が敬遠する理由は、能力や待遇以前に、「知らない。何をしている会社かわからない」「社会との接点が見えないからイメージが湧かない」というものが多い。
さらに、多くの中小BtoB企業は価格決定権を持てず、利益が出にくい構造にある。価格を上げられないから、給与を上げられない。給与を上げられないから、採用力も上がらない。この負の連鎖が、企業の成長を静かに縛っている。
もうBtoBとBtoCの境界線はなくなっている
少し視点を引いて見ると、いまの時代、BtoBとBtoCの境目そのものは、本質的にはなくなりつつある。顧客体験、ストーリー、共感、発信、採用。これらはすべて、BtoBかBtoCかに関係なく、企業の競争力を左右する要素だ。いま世界で成長している多くの企業は、実はハイブリッドな存在になってきている。
にもかかわらず、昔ながらのBtoB企業ほど「自分たちはBtoBだから」という思考の枠に縛られてしまうことが多い。BtoC的な発想や取り組みを、どこか他人事として捉えてしまう。その結果、本来持っている技術や思想、ストーリーが、世の中に翻訳されないまま埋もれていく。問題は能力ではない。発想の前提条件が、少し古いだけなのだ。
売上はBtoBのまま、世の中とつながる「BtoBC」
そこで僕が提案したいのが、「BtoBC企業」という考え方だ。売上の99%はBtoBのままでいい。無理に事業構造を変える必要はない。ただ、自社の技術やアセットを活かして、ほんの小さくてもいいからtoCの接点を持つ。
例えば、アルミのような素材であれば食器のような日用品を作れるかもしれないし、取引先のものを仕入れた社食+αのカフェでもいい。社屋や倉庫を活用して、地元のアーティストとインスタレーション展示するのもありだ。若手社員の挑戦の場でやらせてみたらいい。
もちろんそれがいきなり事業構造を変えることはない。ただ、toCの接点を持つことで、会社は初めて世の中と直接つながる。お客さんの反応や温度を感じ、自分たちの価値を自分たちの言葉で語る必要に迫られる。デザイナーのような職種の人とも繋がりができる。この体験が、価格決定力や採用力、そして組織の誇りを少しずつ変えていく。その初手としてのBtoBC。自社の物語を持ち、世の中との距離を縮める現実的で強い一歩になると思う。