高木新平コラム|地域ブランディングの本質は、誇りを物語にできるかどうか
トレンド
2026.02.04
- #トレンド
地域ブランディングの相談を受けるとき、
多くの場合、聞かれるのは
「何を打ち出せばいいか」という問いだ。
けれど僕は、いつも少し違和感を覚える。
問うべきなのは、
何を打ち出すか以前に、
何を信じるかではないかと思うからだ。
どんな地域にも必ず、
その土地に根付く圧倒的なものがある。
問題は、それを信じ切れているかどうかだけだ。
⸻
海外に出ると、日本の良さに気づくことがある。
水のうまさ、街の清潔さ、人との距離感。
日本にいると当たり前すぎて、
わざわざ言葉にすることもない価値だ。
地域も、まったく同じだと思っている。
その土地に長く住んでいる人ほど、
「こんなの当たり前だろう」と思ってしまう。
でも外から見れば、
それは十分に強く、誇れる価値だったりする。
僕は「未来は過去の再編集」という考え方を大事にしているが、
地域ブランディングとは、
新しい価値を無理につくることではない。
その地域に当たり前にある、確かな価値を編集することだ。
⸻
2023年から、富山県のブランディングとして
「寿司といえば、富山」を展開してきた。
マイナーな県だからこそ、
4000mの高低差という独自の地形を、
寿司という分かりやすい形で表現し、
一点突破で外の認知を取りにいく。
これは、PR的発想に基づいた
コミュニケーション戦略だった。
実際、この戦略は機能している。
寿司の消費額は日本一になり、
観光文脈でも食の文脈でも、
富山の認知は確実に変わりつつある。

2023年から始まった「寿司といえば富山」
それは、現場で素晴らしい仕事を
積み重ねてくださっている方々のおかげだ。
⸻
ただ、寿司といえば富山、という話と、
富山という土地が何を信じているか、という話は、
同じではない。
寿司は、外に向けた入口であり、
関係人口を生むための
コミュニケーションの手段だ。
一方で、
「この土地は、何をよりどころに生きているのか」
という問いには答えていない。
その問いに対して、
富山には最初から答えがある。
⸻
立山連峰だ。

富山を包み込む3000m級の立山連峰
立山は、富士山や伊勢神宮と同じように、
もともと信仰の対象だった。
ここで言っているのは、宗教の話ではない。
ブランドの話だ。
ブランドとは、
何を信じているか、ということだと思っている。
東京を信じるのか。
世界を信じるのか。
それとも、自分たちが立っている
この土地そのものを信じるのか。
地域ブランディングにおいて本当に大事なのは、
外に向けて何を誇るかよりも先に、
地域の内側に、信じ切れる対象があるかどうかだ。
⸻
富山の価値を辿ると、
その源流はすべて立山連峰に行き着く。
雪解け水が大地を潤し、
栄養を運び、富山湾へと注がれる。
豊かな魚介類も、
製造業や製薬業を支える水と大地も、
すべて同じ源流を持っている。
だから「寿司といえば富山」も、
突き詰めれば、
立山連峰という物語の一部にすぎない。
⸻
立山連峰を富山の象徴として掲げるというのは、
新しい資源をつくることではない。
そこに在るものを、信じ切る
という決断だ。
偶像崇拝というと言葉は強いかもしれない。
けれど、人は何かを象徴として掲げなければ、
誇りを共有することはできない。
この考え方に強い確信を持ったきっかけのひとつが、
薩摩会議というカンファレンスだった。
桜島のビジュアルを一貫して掲げ続ける姿勢に、
圧倒的な世界観を感じた。

地域カンファレンスの代表格「薩摩会議」
制作は、TSUZUKU 久保さん
地域ブランディングは、
結局ここまでやるかどうかだと思う。
⸻
そんな文脈の延長線上で、
カターレ富山の新ユニフォームをデザインした。

富山を代表する企業「ゴールドウィン」製作
地域を代表するクラブのデザインは、
単なるスポーツチームの話ではない。
それは、その地域が何を象徴として背負うかを可視化する行為だ。
掲げたメッセージは、
「富山を背負え。」

Creative Director:高木新平 (NEWPEACE)
Producer :渡辺夏彦 (NEWPEACE)
Art Director:今井祐介
Designer:高木紳介 (TAKI CORPORATION)
Designer:恩地遼平 (TAKI CORPORATION)
Production Producer:山田建太 (TAKI CORPORATION)
Photographer : 川村将貴 (CONTRAST Inc.)
Photo Assistant : 村上貴滉 (CONTRAST Inc.)
Retoucher : 津金卓也 (newgold)
Hair&Makeup : 坂田佳子 (A2)
Photo Producer : 池田了 (P.I.C.S.)
Photo Production Manager : 纐纈響輝 + 馬場大樹 (P.I.C.S.)
立山連峰という象徴を背負うこと。
それは、富山で生き、挑戦し、戦う覚悟を
引き受けるということでもある。
⸻
誇りは、放っておけば消えていく。
制度でも、予算でも、守ってはくれない。
誇りを残す方法は、ひとつしかない。
物語にすることだ。
寿司で外の認知をつくり、
立山連峰で内側の信念を定める。
プロモーションとブランドは違う。
前者は伝える技術で、
後者は信じる覚悟だ。
では、
あなたの地域には、
当たり前すぎて見過ごしている
「圧倒的な価値」はないだろうか。
地域ブランディングの本質は、
誇りを物語にできるかどうかにある。

富山県のカンファレンス「しあわせる。富山」
ビジュアルは、立山連峰で統一。制作はROLE羽田さん



今年も3月に開催予定。僕も登壇します。ぜひ! https://seichosenryaku-toyama.com